現在、大阪にある職業訓練校の「グラフィック・WEBデザイン修得科」というコースを受講していて、残り1か月程で卒業という段階に差し掛かっています。
今回は、「職業訓練」と呼ばれるものがどういった制度に基づいて行われているのかというところについて言及していきたいと思います。
「公的職業訓練」(ハロートレーニング)とは?
職業訓練の正式な名称は「公的職業訓練」で、「ハロートレーニング」という愛称を持っています。ハロートレーニングを略して「ハロトレ」と呼ばれることもあるようです。
以下、「ハロートレーニング」で統一させていただきます。
(「公的職業訓練」とか「公共職業訓練」とか似たような名称の紹介が続くため。)
厚生労働省によると、ハロートレーニングとは「求職者が就職に必要な職業スキルや知識を習得するために、無料で受けられる訓練」のことを言います。
ここでいう「求職者」というのは、ハローワークで「求職申し込み手続き」を済ませた人のことを指します。
「indeed」や「doda」といった民間の求人系サービスを使っているからといって、職業訓練を受ける資格が得られるというわけではありません。
(ただし、在職労働者が対象となっている有料のハロートレーニングもあるようで、必ずしも定義に沿うわけではないようです。このへんが「職業訓練」という言葉の定義をややこしくしているのではないかと思われます。厚生労働省さん、頼むから整理しやすいように定義し直してください、、、)
「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」について
また、ハロートレーニングには「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。
公共職業訓練の中には「学卒者向け(有料)」や「障害者向け(無料)」のハロートレーニングもあるそうなのですが、話を簡素化するために、ここでは「公共職業訓練(離職者向け)」「求職者支援訓練」の2つに絞って説明していきます。
「公共職業訓練(離職者向け)」と「求職者支援訓練」は、対象者が異なります。どちらも「ハローワークの求職者」しか受けられないということに変わりはないですが、「雇用保険の受給資格の有無」によって、どちらの種類の訓練を受けられるのかが変わってきます。
- 雇用保険の受給資格 有り → 「公共職業訓練(離職者向け)」
- 雇用保険の受給資格 無し → 「求職者支援訓練」
また、「公共職業訓練(離職者向け)」と「求職者支援訓練」では実施機関や訓練期間が異なります。
公的職業訓練の種類 | 公的機関 | 民間機関 | 訓練期間 |
公共職業訓練 (離職者向け) | 国(ポリテクセンター) 都道府県(職業能力開発校) | 民間教育訓練機関等 (都道府県からの委託) | 3か月~2年 |
求職者支援訓練 | 民間教育訓練機関等 (訓練コースごとに厚生労働大臣が認定) | 2~6か月 |
雇用保険の失業手当は、通常支給されるまでに3ヶ月かかりますが、公共職業訓練を受ければすぐに支給されるそうです。このあたりについては、ハローワークに行くと職員さんが懇切丁寧に教えてくれるので、失業直後で困っていたりする場合は、無駄なプライドも遠慮も捨てて、話を聞きに行くのがよいでしょう。
まず、雇用保険の受給資格があるかどうかを調べよう
お金をもらいながら職業訓練が受けられる?
雇用保険を受給できる人は受給分を生活費に回しながら公共職業訓練(離職者向け)を受けられますが、雇用保険の受給資格がない人は貯金がない限り「学校」と「仕事」を両立して生活しなければなりません。できれば全ての時間を自分のスキル向上などのために使いたいところです。
そこで求職者支援訓練を受ける人に用意されているのが、「求職者支援制度」です。
なんとこの制度、月10万円の生活支援が受給できるという激アツな制度です。これを現代の日本国が用意してくれているのです。(日本万歳!)
もちろん、こういった制度は雇用保険に加入している日本の労働者が支えてくれているものであり、給付金の原資はどこかから湧いて出てきたモノではありません。そのため、受給にはいくつかの条件が課せられています。
以下、厚生労働省がホームページに掲載している給付金の支給要件です。
- 本人収入が月8万円以下
シフト制で働く方などは月12万円以下 (※) - 世帯全体の収入が月40万円以下(※)
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練の8割以上に出席する(※)
(病気や仕事など以外の理由で訓練を欠席した場合、給付金は日割りで支給します) - 世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
※ 令和5年3月末までの特例措置
上記の支給要件を全て満たさなければ、給付金を受け取ることはできません。仮に支給要件を満たしておらず給付金の受給ができないという場合でも、無料で職業訓練を受けて「就職サポート」を受けられるので、かなり手厚いサービスとなっています。
以上のように、ハロートレーニングには種類があり、各々で受講対象者が異なったり、実施機関や訓練期間が異なったりします。もし職業訓練を受けることを考えているのであれば、1度ハローワークで「求職申込手続き」をして、自分はどの種類の訓練を受けられるのかということをハローワークの職員さんに確認してもらうのがよいと思われます。人によっては、雇用保険の受給期間を終えてから求職者支援制度を利用するというパターンも可能で、そういったことも教えてくれるかもしれません。
給付金の支給要件を全て満たせば、月10万円を受け取りながら勉強できる
公共職業訓練(離職者向け)にはどんなコースがある?
公共職業訓練(離職者向け)で受けられるコースは大きく分けると、「施設内訓練」と「委託訓練」の2種類があります。
施設内訓練 | 民間には実施できないものづくり系を中心に実施。 | CAD/CAM科、 テクニカルメタルワーク科、 電気設備科 等 |
委託訓練 | 民間にできるものにおいては、 専修学校、NPO等多様な民間教育訓練機関へ委託して実施。 | OA事務コース、 経理事務コース 等 |
施設内訓練は、ポリテクセンター(雇用・能力開発機構)の訓練コースと、都道府県が委託している民間教育訓練機関等の訓練コースの2つで分けることができます。
ポリテクセンター(雇用・能力開発機構)では、主にものづくり分野を中心とした訓練が実施されています。こちらの訓練期間は「標準6か月」です。以下、訓練コースの例。
- テクニカルオペレーション科
- 金属加工科
- 電気設備科
- 制御技術科
- 住宅設備科
- 生産経営実務科
都道府県が委託している民間教育訓練機関等では、地域の実情に応じた訓練が実施されています。こちらの訓練期間は「標準6か月~1年」です。以下、訓練コースの例。
- 情報ビジネス科
- 介護サービス科
- 旅館科
- 陶磁器製造科
- 造船溶接技術科
- 造園科
委託訓練は、多様な人材ニーズに機動的に対応するために設けられているもので、訓練期間は「標準3か月」です。以下、訓練コースの例。
- OA事務科
- 経理事務科
- 情報処理科
- 介護サービス科
- 販売実務科
僕自身は求職者支援訓練の方を受講しているため、公共職業訓練(離職者向け)の実体験をお話しすることはできませんが、厚生労働省のホームページを覗いてみると、概要だけでなく実施状況等も見られるようになっています。
求職者支援訓練にはどんなコースがある?
求職者支援訓練で受けられるコースを2つに大別すると、以下の通りになります。
求職者支援訓練 | 訓練概要 | 令和2年度受講者数 | 就職率 |
基礎コース | 基礎的能力を習得する訓練 | 5,838人 | 52.5% |
実践コース | 基礎的能力から実践的能力まで一括して習得する訓練 | 17,896人 | 60.0% |
令和2年の実施状況を見た限りでは、基礎コースより実践コースの方が就職率が高くなっています。もちろん実践コースを選んだほうが就職しやすいということではなく、そもそも人によってスタートラインが違うということだけなので、自分の身の丈に合ったコースを選ぶのがよいと思われます。
基礎コースでは、ビジネスパソコン科、オフィスワーク科などといったものがあります。パソコンをあまり触ったことがない人やアプリやソフトの扱いが苦手という人向けです。
実践コースでは、様々な分野のコースが用意されています。
IT | WEBアプリ開発科、Android/JAVAプログラマ育成科など |
営業・販売・事務 | OA経理事務科、営業販売科など |
医療事務 | 医療・介護事務科、調剤事務科など |
介護福祉 | 介護職員実務者研修科、保育スタッフ養成科など |
デザイン | 広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科など |
その他 | 3次元CAD活用科、ネイリスト養成科など |
職業訓練校によって、受講内容や訓練期間などが異なります。自分が受けたいコースや科目が決まったら、それに該当する内容の訓練が「いつ」「どこで」「何カ月」受けられるのかを調べるために、ハローワークのインターネットサービス「職業訓練検索」を利用してみることをオススメします。
託児サービスを利用できるコースもあるので、利用したい人は要チェックです。
以上が、「公的職業訓練(ハロートレーニング)とは?」というお話でした。
あくまで推測なのですが、ハロートレーニングにも歴史があり、初めて制度として実施された頃から様相が大きく変わったことで、「求職者が無料で受けられる」という定義から逸れたものも生まれていったのだと思われます。
その結果、何が何やらややこしい感じになってしまっていますが、ハローワークに行けば、必要な情報について職員さんがじっくり説明してくれるので、職業訓練に興味のある人はまずハローワークに行ってみるのがよいのではないでしょうか?