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うつでも起業で生きていく【読書感想文】

【読書感想文】うつでも起業で生きていく 働き方

「うつでも起業で生きていく」

鬱になったことはなく、起業する予定もないため、僕という人間はおそらく想定読者ではない。

けれども、週5日8時間働くことがしんどいと感じながら生きている自分にとって、ひょっとしたら何か救いになるようなことが書かれているのではないか?

そういう希望と期待を持って、この「うつでも起業で生きていく」を手にした。

アフターコロナでも死なない術

「うつでも起業で生きていく」は、2021/5/22というコロナ禍に出版された本

2024年現在は「自粛ムード」など一切なく新型コロナウイルスと共存して社会が回っている感じがあるため、出版された当時と社会情勢が変わっているところがあります。

とはいえ出版当時も今も、人類がコロナ禍を経験した後の世界、つまりアフターコロナの世界だというのは共通していて、そのアフターコロナでも死なずに生きていく術というのが書かれていました。

著者はご自身が鬱病持ちであることを踏まえて、体調が悪い時期が続いても事業が回るように様々な対策を練っているそうです。そして、この本ではそれら対策について具体的に解説してくれていました。

実店舗を持たない

その中でも特に参考になると思ったのは、第5章「払ってはいけないお金を考えよう」の「うつの人は『家賃』を払ってはいけない」という提言です。

まず、うつの人が起業する上で気をつけなければならないのは、とにかく固定費を削ることです。

なぜ固定費を削らなければならないかというと、うつの人は元気なときと元気がないときがありますから、どうしても仕事の進捗が予定よりも遅れがちです。そうすると、固定費がどんどん出ていくビジネスをやっていた場合には、支出は予定通りに出ていくものの、収入は予定通りには入ってこないということになり、早晩倒産してしまいます。だからこそ、うつの人が起業する際には固定費をとにかく削ることが大事なのです。

「固定費を減らそう」というのは会社員をしていても会社内で出てくる話でもあり、とりわけ珍しい話ではありません。ビジネスをする上で経費削減をやっていくのは当たり前の話です。

しかし、うつの人の場合は急に動けなくなることが日常的にあるため、うつの人にとっては「固定費を減らそう」なんていうのは生易しい考え

可能な限り、固定費になるものは極力払わない。そのうちの1つが「家賃」だというのが著者の提言です。

著者の場合は、自分が住む家に対してもルールを設けて生活していると言います。

実店舗を持つなどというのは、私のうつ病起業では論外です。

実店舗を持たない

これは鬱の人向けの提言ですが、アフターコロナの今、この提言は僕のような“健常者”にとっても重要なのではないか?

僕は「週5日8時間働くことがしんどい」と日常的に感じていて、「安い物件でも借りて、ゆるくカフェでも営業しながら生きていきたいなぁ」とか考えることがあります。

しかし、「脱サラだー!万歳!!」とか言ってうっかり物件でも借りて飲食店でも始めてしまうと、「毎月の家賃を払うために働く」という生活が始まります。

参入障壁の低いカフェを、体力も能も無い僕のようなオッサンがいきなり始めても家賃などを軽々ペイできるほどお客さんは来ないでしょう。

たしかに、やり方によっては不可能ではないと思います。

ただのカフェではなくニッチな本が読めるブックカフェにしたり、カフェ営業しながらパソコン仕事でポチポチお金を稼いだりといったやり方もあるかもしれません。

それでも、どうしても体力勝負になるところは生まれてきます。家賃という固定費を払わなければならないという呪縛がある分、精神的な体力も削られます。

そうなると、結局「週5日8時間働く」こと以上に体力を使うことになるでしょう。

「住居とは別で新たに物件を借りて事業をやる」というのは「週5日8時間働くなんて余裕でできる」ような体力オバケがやるものなのだ。

「うつの人は『家賃』を払ってはいけない」という提言から僕はこのように拡大解釈しました。

「実店舗を持つ」なんていうのは、体力オバケの人がやるものだ

低成長の先進国 日本で生き伸びるには

「うつでも起業で生きていく」を読んでいて、意外性があるけど的を射ているなと感じた提言がありました。

それは、第3章「うつでも参入できる市場はどこか考えよう」の「うつの人は衰退産業で起業しよう」というものです。

うつの人はどんな産業に参入すればいいのか?探す方法は色々あるのですが、まずは一番わかりやすいところを説明します。

それは”衰退産業”で起業することです。

つまり、資本力のある大手企業や有能な経営者が選ばないような市場を狙えということです。

とにかく有能な競争相手とエンカウントしないこと

うつ病企業において、有能な競争相手と遭遇しないことが重要。これが著者の提言です。

著者はメイン事業の参入先として「学習塾産業」を、サブの事業の参入先として「出版産業」を選んでいます。

もちろん、それら業界にも大手企業や優秀な人はいるそうなのですが、他の業界と比べるとかなり少ないようです。

そして、少なからずいる「大手企業」や「優秀な人」と競争しないように、手間暇のかかる市場を狙うことで「うつでも起業で生きていく」を実現させているようです。

この「うつの人は衰退産業で起業しよう」は、鬱の人に限らず、特に日本に住む人全般に有効だと考えられます。

なぜなら日本という国そのものが「衰退産業」だからです。

高度経済成長期には勢いで新しい産業に足を突っ込んで上手くいったという人は多かったかもしれません。しかし、今の日本にそのような勢いはありません。

冷え切った市場において、新しい産業で成功させられるのはほんの一握り。「資本力」「聡明さ」「体力」の三拍子が揃っている人だけです。

もし起業するなら、ビジネス書によくあるような教えを鵜呑みにせず、「”衰退産業”で起業する」のが良いと感じました。

起業するなら「衰退産業」で

生産性を追わない生き方

第7章「事業を持続させる方法を考えよう」の「うつの人は『最大の努力』で『最小の結果』を出そう」というのも意外性があるけど的を射ていると思いました。

「”衰退産業”で起業する」に少し通じるところではありますが、生産性の高い産業や事業はみんなが狙いたいところです。つまり、強敵が集まるところです。

「最小の努力」で「最大の結果」を出すのは、健常者の仕事だ

生産性が高いほど利益が得られるビジネスの世界において、多くの会社が「最小の努力」で「最大の結果」を出すために死力を尽くしています。

しかし、そういった生産性を求めるビジネスというのは、いつ動けなくなるか分からないうつ病起業においては避けなければならないところなのです。

そして、この「うつの人は『最大の努力』で『最小の結果』を出そう」というのは、うつ病でも起業家でもない僕のような人間にも有効な考え方なのかもしれません。

「最小の努力」で「最大の結果」を出すというのは「生産性を追いかける生き方」をする必要があり、常に競争で勝ち続けないといけません。

たとえば会社員の場合、生産性の高い人間になろうと思うと、平日に高いパフォーマンスを発揮しつつ、土日に新しいスキルを習得するために勉強する必要があります。

僕自身、平日はフルタイム勤務で心身の体力を削りつつ、土日に新しいスキルを獲得するためにも勉強したり制作に取り組んでいる時期もありました。

しかし、週5日8時間働くだけでボロボロになるような人間なので、平日仕事のパフォーマンスは中々上がらず、土日のスキル習得も中途半端に。

全ての人が「生産性を追いかける生き方」を続けられるわけではない。少なくとも僕は違う。そのとき気づきました。

そういった経緯もあり、「『最大の努力』で『最小の結果』を出そう」というのは、鬱でも起業家でもない僕にも十分にブッ刺さる話でした。

『最大の努力』で『最小の結果』を出そう

鬱じゃない人、起業予定のない人にもオススメ

「うつでも起業で生きていく」を読んで、鬱でも起業家でもない僕に刺さったところについて思ったことをまとめてみました。

著者が優秀すぎる人なので、真似できない内容も多々あったのですが、それでも参考にできる箇所はいくつもありました。

鬱病と無縁の人、起業予定のない人にとっても興味深い本だと思うので、気になる人はぜひ読んでみてください。

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