2022年4月下旬からの半年間、僕は職業訓練校にて「グラフィック・Webデザイン修得科」というコースを受講していました。
そのときの経験から「職業訓練からWEB系職種での就職はできるのか?※」という問いについて言及していきたいと思います。
※クラスの生徒全員がWEB系企業への就職を希望していたわけではない。
通う学校や受講するコースによって状況は様々なので、あくまで1つの体験談として記録を残していきます〜
WEBで何かを作ったことがないという人にはかなり厳しい。
結論から言うと、受講開始時点で「WEB制作に関係すること※を全くやったことがない」という人が数ヶ月でWEB系職種での就職まで辿り着くのはかなり厳しいと思います。
データを取ったわけではないので信憑性のかけらもありませんが、「遊び半分とかでもWEB上でのモノづくりをしたことがない」という人が本人の希望する職種での採用を勝ち取れる確率は0%に近いと思います。
無理ゲーじゃん
以下、僕なりに考えている根拠です。
制作経験がある人とない人
今の時代、「ブログ記事作成」「動画編集」などといったWEB上でのコンテンツ作りはスマホ1台で出来てしまいます。そのため、WEBで何かをつくることに興味があるという人は大体の場合、日常生活の中で何かしらの機会を見つけて自分の手を動かした経験があります。上手さ下手さは関係なく。
むしろ、WEB上で何かを作った経験を踏まえて「じぶんはWEB制作というものに興味がある」という認識に繋がるという考え方も出来ます。
しかし、そういった経験がない場合は「そもそもWEB制作というものがその人にとっての興味の対象ではない」あるいは「WEBで何かを作ることに対して興味はあるけど、能動的に行動できない」のどちらかに当てはまると思われます。
WEB制作に興味があるかどうか
そして、WEB制作に興味が持てない人は、就職が出来るか出来ないか以前に、職業訓練での数ヶ月間の授業や課題を前向きに取り組めない場合が多いように思います。
実際、僕が訓練生だった頃、修了式での最後の挨拶でクラス20名ほどのうちの数人が「毎日とても苦痛でした」というカミングアウトをしていました。(毎月10万円の給付金目的で通学している人が割といる説)
能動的に行動できるかどうか
また、能動的に行動できないタイプの人は、職業訓練のように「全員が理解できるスピードに合わせた授業進度」で授業が進められる環境でも、素直に授業の進み具合に自分を合わせてしまって十分な学習量をこなすことが出来ないと思われます。
学校によるとは思いますが、職業訓練の授業はかなりゆっくり進むので。。
以上を踏まえると、WEBで何かを作ったことがないという人には職業訓練からWEB系職種での就職はかなり厳しいでしょう。
僕が通っていたクラスは生徒数が20人くらいだったのですが、WEB系職種での就職をした人は1人、グラフィック系職種での就職をした人も1人。WEB系フリーランスになった人はゼロでした。
学校運営側は、生徒が希望職種に就けるかどうかに興味はない。
職業訓練の正式名称は「公的職業訓練」です。「公的」という名がつく通り、職業訓練校は国や自治体からの補助金を受け取って学校運営を行なっています。
認定訓練助成事業費補助金
学校が補助金を受け取るためには、職業訓練を受けた生徒の就職率が定められている基準を超えていなければならないようです。
※基準に関する具体的な数値はおそらく自治体ごとに異なる
学校運営にとっての最重要項目は、生徒の「就職率」
補助金を受け取れなければ学校法人としての死活問題に繋がるので、運営サイドは「就職率の目標達成」に対して必死にならざるを得ません。
そのため、学校運営者は生徒の「就職率」をなんとしてでも基準値以上にしなければなりません。
しかもこの「就職率」には「職業訓練を修了後3ヶ月以内の」という条件付きです。
逆に、就職先の職種は一切問われません。「職業訓練で学んだことを活かした職種に限る」という条件はないのです。つまり、コンビニや飲食店の社員でも良いのです。
そういった事情があるため、学校運営サイドは訓練を終えた生徒に対して「訓練を修了したやつはとにかくどんな職種でも良いから就職しろー!!!」という勢いで就職先が決まっていない人に鬼電していきます。※
訓練が終わったならさっさと就職しろー!!
職種なんて何でもいいから就職しろー!
クラスのグループLINEがあるのですが、訓練修了して1~2ヶ月が経つと、学校事務局からの鬼電の被害報告でLINEのタイムラインが埋まっていました。
※誰が悪いという話ではなく制度の仕組み上仕方のないことだと個人的には思っています。
先生方は生徒が希望職種に就くための支援をしてくれる
一方で、先生方は親身になって就職についてアドバイスしていただいたり相談に乗っていただいたりしました。
特にWEB系担当の先生は、企業の採用担当の経験がある人で、その経験からのリアルなアドバイスなんかもくださって、僕の就職活動をかなり後押ししてくれました。
学校運営側は生徒の就職先の職種に興味がないが、先生たちはそうではないと言えるでしょう。
職業訓練校にも三笘薫タイプがいる
突然ですが、日本サッカー界のスター「三笘薫」をご存知でしょうか?今や、世界のスーパースターになりつつあるサッカー選手です。
Mitoma!Mitoma!Mitoma!
三笘選手のキャリア選択
「中田英寿」「本田圭佑」など、かつての日本サッカー界のスターたちの多くは、高校卒業後にJリーガーになり、プロでのキャリアを始めています。
三笘選手にも高校卒業時点でJリーグチームからオファーがあり、高校卒業と同時にプロキャリアを始めるという選択を取ることが可能でした。
にも関わらず、三笘選手はその選択肢を選ばずに「大学に行き、4年間でもう一度自分を鍛え直したい」という理由で「大学への進学」という選択をとりました。
言葉通り、大学4年間で学業と両立させながら自分を鍛え直した彼は、大学卒業してからはJリーグで無双状態に突入します。
そして、今となってはイングランドのプレミアリーグで活躍しています。すでに、かつての日本サッカー界のスターたちより世界で活躍しているといっても過言ではないでしょう。
そんな三笘選手と同じような選択をとった人が職業訓練校にもいました。
三笘タイプの訓練生
職業訓練を修了した後は、生徒たちは各自で「就職活動をする」「ポートフォリオ作品をブラッシュアップする」「休息期間を設ける」など様々な行動を取っていました。そんな中、ある生徒はWEBデザイン系の学校に進学したそうです。
「もう一度自分を鍛え直したい」という理由で。
職業訓練の修了式が10月末だったので、ちょうどカタールW杯2022のグループリーグが始まる1ヶ月前というタイミング。
「三笘の1ミリ」という言葉が誕生する前でしたが、彼は三笘選手と同じ理由で職業訓練校を修了後に学校進学という選択を取りました。
三笘選手以上の「意外な選択」
職業訓練生の頃は「職業訓練受講給付金」という毎月10万円の支給を生活費に充てることができましたが、訓練期間が終わると支給されなくなり、生活費は基本的に自分で賄わなければなりません。
この給付金は受給条件の中に「貯金額が少ない」「所得が少ない」というものがあるため、タンス貯金でもしていない限り、基本的には賃金を得るために働かなければなりません。
しかし、そんな状況の中でも彼は「もう一度自分を鍛え直したい」という気持ちから学校進学を選択。ある意味、実家(もしくは奨学金)に頼ることができる三笘選手以上に「意外な選択」なのかもしれません。
いつか「WEB業界の三笘薫」に会いたい
訓練期間が終了してから10ヶ月が経過。彼がどこで何をしているかは全く知りません。今も学校に行っているのか、学業との両立は諦めて就職したのか。
もし今も「自分を鍛え続けている」のであれば、一緒に職業訓練を受けていた頃とは違う姿になっているでしょう。
いつか、どこかで「WEB業界の三笘薫」に出会える日を楽しみにしています。
職業訓練からWEB系職種で就職するまでの道のりは多種多様。正解はないし、「WEB業界の三笘薫」のように新しい答えを出そうとする人もいる。
以上が、「職業訓練からWEB系職種での就職はできるのか?」というお話でした。
結局、「職業訓練に通えば人生が変わる」「半年間頑張れば希望職種で就職できる」なんていう話はほとんどないです。
そういった現実を認識することが「はじめの第一歩」に繋がるのではないかと思います。